サ‼︎ アニメ2期BD 5巻 封入特典『WHITE FIRST LOVE』について

はじめに

今回はラブライブ !サンシャイン‼︎ アニメ2期 BD5巻の封入特典、黒澤ダイヤのソロ曲『WHITE FIRST LOVE』について、気付いたことをまとめようと思います。

 

全体的な話

黒澤ダイヤのソロ曲ということで琴の音色が印象的に使用されており、雰囲気はしっとりと切ない悲恋を歌ったバラードと言えるでしょう。

 

歌詞の内容は、具体的な単語が少なく、抽象的でやや漠然とした印象を受けるかと思います。なので、聴いた人の解釈にはかなり幅が出てくるものと思いますし、私自身今回はかなり悩みました。

 

歌詞のみに根拠を求めるのが難しいため、以下の考察ではかなり恣意的に解釈して考察を進めている部分があります。そのことを予めご了承いただければとおもいます。

 

黒澤ダイヤの“白さ”

早速、歌詞を見ていこうと思います。

想いが届かないって悩むのは

苦しいだけでしょう

誰にも言えなくて あなたへと心が揺れる夜

恋が始まるの…?


答えはいつだって正しく見つかると

思っていたけれど 例外もあるのね

白さが物足りない 曖昧な状態で

手掛かり探すなんて 途方に暮れるわ

 

黒澤ダイヤはいつも冷静で理性的な判断を下してきました。

周りから求められたことへ常に「正しい答え」を導ける、頭の良さが彼女にはありました。

 

彼女は常に潔白であり、明白である。

 

それが黒澤ダイヤのもつ“白さ”と言えるでしょう。

また、その“白さ”は元々の彼女が生まれ持っていたものというよりかはむしろ「旧網元で名家のお嬢様」という、彼女の立場がそうさせてきたであろうことは、彼女に関するサイドストーリーなどから容易に想像がつくでしょう。

 


幼少の頃から黒澤ダイヤをよく知る松浦果南小原鞠莉は彼女のことをこう評価しています。

 真面目でちゃんとしてて 頭が良くてお嬢様で

頼り甲斐はあるけど、どこか雲の上の存在で

みんなそう思うから、ダイヤもそう振舞わなきゃって、どんどん距離を取っていって

本当はすごい寂しがり屋なのにねえ

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幼少の頃から黒澤ダイヤは名家の跡取りとして相応しい人物になるべく育てられ、真面目な彼女はそうあるべく振る舞ってきたのでしょう。

そうすることで周りのみんなが「彼女は高潔で正しい人間なのだ」と感じ、

そう思われることで彼女は一層そのように振舞い、さらに周りと距離をとってしまう、

そんなことを幼少の頃からずっと、何年も何年も続けてきたのです。


幼少の頃であれば寂しがり屋の彼女はその孤独に悲しみ悩むこともあったでしょう。
しかし、やがて成長した彼女にとってはそんな孤独に悲しむことも、もはや日常にありふれたものとなり、いつしか「苦しいだけでしょう」と自身が悲しみ、悩むことにすら答えを出してしまったのでしょう。


しかし、ある夜、彼女の理性的な頭では答えの出せない

“例外”に遭遇してしまいます。

 

突然、自分の心に生まれた衝動を理解しようとしても、

彼女が長年従ってきた理屈だけでは明白にならず、途方に暮れてしまうのです。

 

言葉ひとつで希望持ったり

勝手に絶望してみたり

もてあます熱さが こわい

 

想いが届かないって悩むのは

苦しいだけでしょう

誰にも言えなくて あなたへと心が揺れる夜

恋が始まるの…?


今まで、孤独に悲しむことにすら理性的な答えを出してきた黒澤ダイヤの揺るぎない心が、「言葉ひとつに希望を持ったり/勝手に絶望したり」と揺れてしまいます。

 

なぜなら、“あなた”に出会ってしまったからです。

 

その出会いは黒澤ダイヤにとって、ずっと誰にも言えず、忘れてしまおうと閉じ込めていた孤独の悲しみを思い出させるものだったのでしよう。

そんな“あなた”との出会いに、彼女は恋の予感を抱いたのです。

 

話に聞いていても信じていなかった

自分の気持ちは常に 明快な筈だと

 

優しくされたい 違うそうじゃない

もっとひりひりしたくなる

目覚めそう何かが こわい


どんなことがあっても冷静で理性的で、

気持ちは一つ、答えは常に明快なんだ

そう彼女は思っていたのです。

そして彼女はその正しくて孤独な世界にずっと縛られてきたのです。

 

しかし彼女の中で目覚めそうな何かは、その世界を否定してしまうのでしょう。

 

彼女が今まで家や周りの者に求められてきたこと

彼女がずっと信じてきた正しさ

そして正しさ故に生まれた痛みや悲しみ

そういったものを全て打ち崩してしまうのでしょう。

 

黒澤ダイヤの恋は「優しくされたい」なんてものでは決してないのです。

彼女の“白い”世界を塗り替えてしまうほど激しく、心がひりひりするような情熱を、彼女は「こわい」と叫びながらも、求めるようになったのです。

 

あなたの目がきっといけないんでしょう

孤独な光が

私と似てるから惹かれるの 戻れなくなりそう

恋の始まりね…?

この曲の1番では、黒澤ダイヤが“あなた”と出会い、その時に忘れようとしていた悲しみを思い出し、心が揺れ、恋を予感したのでした。

 

それが2番になると、この先に彼女の恋があることを確信し、進み始めるのです。

 

しかし、その恋は彼女が今まで信じてきたものを捨て、彼女の価値観を根底から塗り替えてしまいます。それ以上進むともう戻れないということに、彼女は気付いているのです。

 

それほどまでに黒澤ダイヤが惹かれてしまう理由、それは“あなた”の目を知ってしまったから。

 

黒澤ダイヤに似た、理性的でクールだけどどこか孤独の悲しみに苦しんでいるような、そんな光を宿した目を持つ“あなた”に、彼女は出会ってしまったからなのです。

 

あなたの目がきっといけないんでしょう

孤独な光が

私と似てるから惹かれるの 戻れなくなるの

 

想いを届けたいって変わってく

願いが生まれる

言えないままじゃいや あなたへと心が走る夜

恋になった夜

黒澤ダイヤの中に新たな価値感、可能性を目覚めさせることになった“あなた”への想いに、もはや迷いはありません。

 

この胸の中の熱い想いを届けたい

誰かに伝えたい

そして彼女の揺れていた心の向かう先が一つに定まり走り始めるのです。

 

恋になったのです。

 

黒澤ダイヤの「初恋」

 WHITE LOVE, FIRST LOVE

恋が始まる

 

さて。最後に。

 

それまではいつも冷静で理性的だった黒澤ダイヤ

頭の良い彼女が答えを出せないほど情熱的に惹かれてしまうFIRST LOVE、すなわち彼女の“初恋”とは一体何なのか?

 

以下、私なりに解釈をしていこうと思います。

 

まず一般的に「恋」というと、男女の恋愛を指します。

その線で行くと例えば「遠い将来、黒澤ダイヤがどこぞの殿方のことを好きになってしまい、家の反対を押し切って自由恋愛を渇望する歌」とも取れ、それはそれでエモいかもしれませんが、ラブライブ !の物語で描かれた事と無関係の妄想話になってしまいます。

 

一方、ラブライブ !では「恋」が指す意味が拡張されており、それが端的に明示されているのがサ‼︎1期2話『#2 転校生をつかまえろ!』になります。

チカちゃん、スクールアイドルに恋してるからね

(〜中略〜)

スクールアイドルにドキドキする気持ちとか 大好きって感覚とか それなら書ける気しない? 

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つまり、「恋になった」を「スクールアイドルを好きになった」と解釈すると、この曲は「黒澤ダイヤが初めてスクールアイドルが好きになった」時のことを歌っている、と考えることができます。私は一貫してこちらを採用しています。

 

Aqours”の結成前夜

「『WHITE FIRST LOVE』とはどういう歌なのか?」をまとめてそろそろ〆にしようとおもいます。以下が私なりの答えです。

 

出会ったのです。

 

名家の跡取りとして相応しい人物であろうとするがあまり

周りと距離ができてしまい

本当はすごい寂しがり屋なのに

与えられた立場での義務感から本当のことを言い出せない

黒澤ダイヤが。

 

そんな彼女とよく似て理性的でクールな、

しかしどこか悲しそうな目をした

あの生徒会長に。

 

 

 

 

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黒澤ダイヤは毎日、孤独の痛みや悲しみを抱えていながらも、

それを誰に言うこともできず、

ただ日常のありふれたものとして、

心の中に閉じ込めてしまっていたのです。

 

そんなありふれた悲しみ、ありふれた痛みとこぼれそうな涙を

ずっとこらえていた黒澤ダイヤにとって、どこか彼女に似た目を持つ

絢瀬絵里はとても眩しく輝いて見えたことでしょう。

 

ずっと理性で抑えていた悲しみ、痛みは止まることなく、

彼女の中で激しく渦巻き、

全てを崩してしまったのです。

 

そして彼女の初恋、

彼女のスクールアイドルとしての人生が始まったのです。

 

 

おわりに

今回の『WHITE FIRST LOVE』考察では結論を設けませんでした。

 

黒澤ダイヤが惹かれて止まない絢瀬絵里のソロ曲との直接的な関連性を見つけることができず、結論として「『ありふれた悲しみの果て』のアンサーソングである」とまでは言えないかなと思い、解説文中に引用するに留めておきました。

 

『WHITE FIRST LOVE』という曲は冒頭で触れたとおり、黒澤ダイヤの想いを抽象的に表現した歌詞になっており、聴いた人それぞれの考え次第で幅の広い解釈ができる曲になっていると思います。

今回の考察のイメージにとらわれることなく、他の楽曲や物語にヒントがないか探したり、今後の発表によってまた新たな解釈を試みたり、といったことも大切な楽しみ方なんじゃないかなと思っております。

 

というわけで今回は以上です。

また次回をお楽しみに。バイバイ