ラブライブ!物語考察
はじめに
桜内梨子は当初のキービジュアルや設定から、西木野真姫との対比の中で語られることが多かったように思います。
しかし、ラブライブ!サンシャイン‼︎(以下サ‼︎)2期アニメを経て振り返ってみると、その比較に私は違和感を覚えるようになっていて、「なんで違和感があるんだろう?」というのが今回の考察です。
ちなみに、元々μ'sとAqoursのキャラを比較するようなことを私は今までしてこなかったのですが、メンバーにはそれぞれ物語進行上の役割があるし、それはμ'sの誰かの役割をAqoursでは誰かが担っていたり、一人が複数を兼任していたり、途中で変わることもあると思ってます。
ここで言う物語進行上の役割というのは、見た目や特技が共通であるとかそういうことではなく、主人公であったり物語の転機となるような役のことを指しているのですが、そのキャラが担う役割を理解する事でラブライブ!の物語やそのキャラたちのことをより深く理解し、より楽しめるようになるんじゃないかな〜っとか考えています。
それで宜しければ、しばしお付き合い頂ければと思います。
ラブライブ!とはどんな物語だったのか
では早速本題ですが、桜内梨子の役割と、μ'sではその役割は誰が担っていたのか、という所に注目して第1シリーズの「ラブライブ!」(以下無印)とサ‼︎を見比べてみました。
この2つのシリーズには、似ているシーンも多く、「学校廃校とそれを阻止するスクールアイドル」というモチーフも共通しています。しかし、描いている物語には大きな違いがあります。
そこの違いをまずはおさらいしておきます。
無印とはどんな物語だったのか
無印1期では、高坂穂乃果が学校が廃校するとの知らせに対して「何かできないか?」とμ' sを始めます。
そんな中、スクールアイドルの曲作りやメンバー集めといった苦難のほか、学園祭での失敗や南ことりの留学といった問題がμ'sには訪れました。
高坂穂乃果はそのことで自信を無くしてしまいますが、仲間からの支えもありスクールアイドルを再び始めることを決意します。
2期では様々な苦難から立ち直った高坂穂乃果は、 みんなが楽しく過ごせて幸せになれる、そんな学校にしようと生徒会長として奔走します。
個々のメンバーらの持つ想いや悩みを一つずつ分かち合いながら、μ'sは結束を強くしていきます。
そしてなんやかんやあってラブライブで優勝します。
つまり無印とは「降り掛かる様々な苦難をμ'sたちが力を合わせて乗り越える姿」を描くことで、「友情を信じて諦めずに夢を追い続けることで願いは叶う」という話でした。
サ‼︎とはどんな物語だったのか
サ‼︎1期では、取り柄のない普通の高海千歌が、輝きを探してAqoursを始めます。
それぞれの悩みを抱えたメンバーたちが、加入したAqoursに自分たちの輝ける場所を見出します。その輝きはやがて大きくなり、学校のみんなや町中の人を照らし始めます。
2期ではラブライブの地区予選では敗退したものの、学校存続に向けて走り続けるAqours。しかし努力も虚しく、学校は廃校が決定してしまいます。
目的を見失いそうになる千歌たちに、学校のみんなから輝く方法を教えられ、またラブライブ優勝へ向けて走り出します。
そして高海千歌は、ずっと自問してきた「輝きとはなんなのか」に答えを見つけラブライブに優勝しました。
つまりサ‼︎とは、「夢に向かって全力で足掻き走り続けるAqoursたちの姿」を描くことで、「一歩一歩目的に向かって、みんなと一緒に過ごしてきたことの全てが大切な時間になる」という話でした。
桜内梨子の役割とは?
さて、桜内梨子とはサ‼︎でどんな役割を果たしたのでしょうか。
まず、μ'sに憧れてスクールアイドルになりたくてうずうすしている高海千歌に、μ'sと同じ音ノ木坂学院から転校してきた少女として桜内梨子が出会うことで、Aqoursの物語が転がり始めました。
長年続けてきたピアノに輝くものを感じられなくなり、ピアノから逃げるようになっていた桜内梨子自身にとって、この高海千歌との出会い、そしてAqoursと共に過ごした時間は、ピアノや色んなことから目を背けずに向き合えるようになり、やがて輝きを取り戻すことができるようになるきっかけでした。
このことは、「夢に向かって全力で足掻き走り続けてきたことの全てが大切な時間になる」というサ‼︎アニメ全体に流れる大きな物語そのものを象徴しているのかもしれません。
つまりサ‼︎アニメで桜内梨子は、物語全体を象徴したもう一人の主人公だった、と私は考えています。
桜内梨子の役割はμ'sでは誰が担っていた?
では、サ‼︎で桜内梨子が担っていた役割を、無印ではμ'sの誰が担っていたのでしょうか?
私の注目したキャラは絢瀬絵里です。
絢瀬絵里は、当初音ノ木坂学院の生徒会長として学校を救おうと考えるあまり、逆効果になるかもしれないμ'sの活動へ反対していました。
しかし、彼女の責任感の強さは、μ'sだけでなく実は彼女自身をも苦しめていました。
無印2期最終話にて、絢瀬絵里は生徒会長だった頃を振り返り、「何かに追われてるような感じで、全然余裕がなくて、意地ばかり張って」と息苦しさのようなものを感じていたと高坂穂乃果へ打ち明けています。
彼女だけの力では苦しむばかりで叶いそうもなかった望みが、μ'sに入ることでみんなとの友情に助けられ、やがてみんなが楽しく過ごせる素敵な学校にするという彼女の望みが叶うことになりました。
このことは、「少女たちが友情に支えられながら諦めずに苦難を乗り越えることで願いは叶う」という無印の物語を象徴しているのかもしれません。
まとめ
以上のことから、μ'sのリーダー高坂穂乃果とAqoursのリーダー高海千歌を中心に描かれるラブライブ!の2シリーズですが、そこで描かれた物語を最も象徴的に表していたキャラ(=もう一人の主人公)はそれぞれ、絢瀬絵里と桜内梨子だったのでは……というのが今回の私の考察になるわけですが、皆さんの考えはいかがでしょうか?
それではまたお会いしましょう。バイバイ!